映画「第9地区」のこと

悲しいけど、人間なのよね。


映画「第9地区」のことを知った時には、「ついに実在感満載のドキュメントタッチSFの登場か!」と、待ちきれない思いになったことを覚えている。
ラッキングとマッチングの技術(&ソレっぽく見せるセンス)の向上で、そこで撮ったかのように思える「合成に見えない」世界を見せる映像は、3,4年前からのトレンドであり、随分映画に馴染んできている。
しかし、なかなか日本公開の予定は立たず、米国在住の映画批評家 町山智浩さんが紹介したり、公開応援WEBが立ち上がったりと、「劇場で観たい」熱が高まり、アカデミーのノミネートもいいタイミングであり、ついに公開されました。なので、当然のように初日に観に行きました。


■映画「第9地区」応援WEB
http://district9jp.web.fc2.com/


可笑しくて、やがて悲しき・・・


見終わると、胸が痛かったのです。
いろいろと突き刺さってきました。


主人公があまりにも普通の人。それも「ふつうのいい人」過ぎて。
普通に妻を愛し、普通に職務を全うし、普通にユーモアもある。
そして、普通に非人道的なこともすれば、普通にキレるし、普通に正義に目覚めたりもする。


そのどれもが、ゴールではなく、彼の中の一側面でしかなくって、そんな風に出てきたエゴが、誰かを傷つけたり、助けたり、自分を傷つけたり、助けたりするんだろうな、と。
もうほんとバカだよな。オレら善良な市民って。


その上で、いろんなものに抗う勇気が必要なんだろうな。


とか、そんなことを思うのでした。


あと、宇宙人の描き方がその「価値観」すら不明なのがよかったです。
「わからないもの」=怖い。
きっと宇宙人が来たら、この部分は前提として在り続けるはずです。
「地球人だったらこうするのに、なんでコイツらしないんだろう」という部分が、映画の中の人たちも、観客も、同じように憶測できるのは、楽しいし、引き込まれました。


映像は、もうホントよくできてました。
前半結構笑えます。そしてハラハラドキドキもして、後半結構熱くなります。


以下のキャリア参照。


■多くのパロディを産んだシトロエンCM(2004)

■ナイキCM "evolution"

■「第9地区」のパイロット版ともいえる"Alive in Joberg"(2005)

■ロボ警官がスラムを闊歩"etra Vaal (Third World Robocop)"


■小4男子による「第9地区」評


■ライムスター宇多丸氏による「第9地区」絶賛評
http://podcast.tbsradio.jp/utamaru/files/20100417_hustler.mp3