映画「サマーウォーズ」のこと


『SUPERFLAT MONOGRAM』(2003/ルイ・ヴィトン店頭プロモーション用アニメ)

コレを見るためだけに表参道に行ったっけ。
ヴィトンのお店に入るのはこれが最初で最後のつもりで。

アニメの冒頭、もう無くなる事が決定していた同潤会アパートが出てくることで、このアニメーションの持つ意味が全て「OK」になってしまった。
ヴィトンの店舗から見える「良き景色」を、アニメというカタチで保存していたのだ。


上記「SUPERFLAT MONOGRAM』と同じ細田監督がつくった「サマーウォーズ」冒頭でも、それと似た感触がボクの中に起こった。
サマーウォーズ」の舞台の半分は「OZ(オズ)」と呼ばれるネット上の仮想空間で、背景が真っ白で影の無い空間に浮かぶカラフルなアイコンのようなアバター達は、かつて表参道のヴィトン店舗で見た映像(SUPERFLAT MONOGRAM)にそっくり、、いやそのまんまだなー。こんなあからさまに村上隆から拝借するのかね・・・?(映画を観た時は、SUPERFLAT MONOGRAMが細田作品だとは知らなかったので・・・)とか思いつつ始まったばかりの映画を斜に構えて観ていると、「OZ」を説明するナレーションは2匹のでかい白鯨を指して・・・

「このOZの守り主の、ジョンとヨーコです」

と紹介するのだ。

その瞬間、ボクの中では全てが「OK」、いや格別な言い方をするならば、全てが「YES」となってしまったのだ。

同監督の前作「時をかける少女」は、やたらに良すぎる評判は聞くも、観てないのだけども、夏休みだし、一つくらいはアニメ映画を観ておこうかくらいの気分で映画館へ。いや、予告編を観ても「なーんかイマイチっぽくね。世界が村上隆だし。」くらいに、声優とかふくめて期待してないくらい。

そして、結構感動した。
いや、よくできてる。
声優にも絵柄にもすぐに慣れたし。

そもそも、舞台は山奥の旧家、そこに集うくせ者の面々とくれば、骨髄反射的に横溝正史的なドロドロとしたミステリーとなるのだが、全く真逆に描いているのが素晴らしい。

そして3回泣かされました。(泣ける映画が必ずしもいい映画とはいえないが)

超ネタバレになるんで、泣いた箇所は以下に反転文字で書くと、、、

■お婆さんが、あらゆる知り合いたちに電話をかけて尻を叩くところ
■お婆さんの「いざという時に読んでね」という手紙の内容が明らかになるところ
まずは落ち着きなさいの書き出しでホロ。
一人になってはいけません、で号泣。
■世界中の人たちが助けてくれるところ


人が死んだ喪失感とか、切なさとか、そういうので泣けるってことはないんだけども、強力な「人を思いやる気持ち」とか、自己犠牲とか、なんかこう「世の中捨てたもんじゃないんよ」っていう展開に、年のせいなのかとっても弱いのです。

ラジオのインタビューで細田監督が「性善説性悪説とどっちを信じます」と問われて「どちらかといえば性悪説ですね。だからこういった映画を作ってるのかもしれない。」旨の発言をしていて、とても共感できたのです。


ただ、知人の一人が「頭いいでしょ俺!な感じがどうもイヤミに思えてしもうたの。」とmixiの日記で感想として書いていたのも、よくわかる。つまり凄く良くできた映画すぎて、スッキリ爽やかすぎちゃうのだ。

例えば宮崎駿さんの生み出す「いびつな映画」のような、トラウマにも似た引っかかりがなく、「いい映画」で終わってしまうのです。



サマーウォーズ』(2009) 劇場用予告

公式サイト:
http://s-wars.jp/


オマケ:小3の感想