トークセッション:福岡伸一&佐藤卓
私たちを構成している全ては、絶え間なく合成と分解を繰り返しながら流れている。
第2回「クリエイティブ・トークセッション in アクシスギャラリー」
福岡伸一 &.佐藤卓 「動的平衡から学ぶ生き方、考え方、捉え方、そしてデザイン」
http://www.axisjiku.com/jp/2009/06/22/
今回21_21デザインサイトからのメルマガで、このトークライブのことを3日前くらいに知って、慌てて参加申し込みをして聞いてきました。
デザイナーの佐藤卓さんが、トークの相手として指名したのが、分子生物学者の福岡伸一先生だったそうだ。
佐藤卓さんを間近に見るのは3度目くらいかな。
大御所デザイナーなんだけれども(ロッテキシリトールガム/明治おいしい牛乳等)、その(ヘア)スタイルや、飄々とした口調は、司会進行向きの文化人といった風情です。
福岡伸一さんは、TBSラジオの「ストリーム」にゲスト出演された時に、随分セクシーなボイスで、ロマンチックな語り口な人という印象を受けてて、「人間の身体を構成する細胞は分子レベルで半年から1年で全て入れ替わる」とかの話から、一度著作を読んでみようと思いつつ、まだ一冊も読めてなかったという。
最初にスクリーンに映し出されていたのは、昔のクールミントガムのパッケージの絵。
ペンギンの後ろにクジラが潮を噴いてます。
福岡伸一さんは、ロッテが広告主の新聞のコラムで、刷新されたクールミントガムのパッケージから鯨が消えたことを嘆き、消えたものもまた時と共に蘇ることがあると記します。
この鯨を消してしまった張本人が新パッケージをデザインをした佐藤卓さんなわけです。
なんでも佐藤さんも鯨を消すことには思うことがあり、新パッケージの4匹目のペンギンが手を振っているのは、去っていった鯨に敬意を示しているそうです。(と言っていたような感じでもあるけど、リップサービスだったかも)
そんな2人のデザインを通したお話からはじまり、デザインと、分子生物学という遠いところにあるようなテーマが、見事に重なっていくトークとなっていました。
福岡先生の素晴らしいところは、佐藤さんが振るデザインについてのクェスチョンを、ほぼ必ず「この答えでよいかどうかはわかりませんが・・・」と枕を付けて自分のフィールドのことを語り始め、その着地点には、キチンとアンサーになっているのです。
例えば、デザインで(ルールなんかを)「決める」のがいいのか「決めない」のがいいのかという佐藤さんの問いかけに対し、福岡先生は、生命が細胞分裂によって生物になっていく課程から、DNAの仕様書としての話になり(DNAは設計図やプログラム、指示書ではない。)、ES細胞の話となる。
ES細胞は、何になるか決まっていないまま増殖し、状況によって何にでもなれるが、その状況によってはガン細胞となってしまうという。
そこにズバリの答えは無いのだけれど、非常に示唆に富んだお話なのです。
以下箇条書き
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■映画「コレクター」が昆虫少年のイメージを損ねてしまった。
昆虫少年は本当はすごく優しいし、生物の死を指先で知っている。
男の子が物心つく前から虫やメカが好きになるのはのフォルムに愛着を持つから。虫の標本づくりに夢中になり、虫を卵から育て成虫にし、殺し、標本にするのは、世界の多様性、ありかたを記述したいという欲求から
そして、世界が美しさ、不思議さに溢れていることを知る。
■「美しい蝶」なんていない
「蝶の美しさ」があるだけだ
人が見ている「美」と蝶が見ている「美」は(きっと)まったく違う。「美」は人の中にある。(何故なら、人の目に見える「色」なんて、実際に在る「色」のほんの狭い範囲なのだから)
■「見る」とは、
百聞は一見にしかずと言うが、実は「見る」ことこそ、言葉に規定されている。
私たちは名付けられているものは見える(結像する)が、名付けられていないものは見えない(結像しない)。
逆に、そこに見えないものを結像させる力もある。
例)トーストに出現したマリア像
http://news.bbc.co.uk/2/hi/americas/4034787.stm
つまり「見る」とは非常に恣意的なものでありのままに何かを見るなんて言うことはできない。
だから「直感」に頼ってはいけない。直感を疑うことが大事。
■「分かる」=世界を分ける
「わかる」ためには「世界を分ける」しかない。しかし、「分ける」ことで見失ってしまうことがる。
何かを「分かる」ために「部位に分ける」必要がある。
しかし、例えば、「鼻」はどこからどこまでが鼻なのだろう。
何かを「分かる」ために時間を止めて考える必要がある。
しかし、時間を止めて考えることで、失われてしまうことがある。だって時間は絶えず流れているのだから。
■「普遍的なもの」
変わっていないように見えるものは、そのサブシステムのレベルでは、頻繁にアップデートが繰り返されている。
生物は、頑丈につくるのをやめて、やわやわなつくりにして、常に更新され続けることで、カタチを保つ「戦略」にした。
■「個性」とはすでにそこにあることが「個性」。
生命現象は繰り返されてはいるけれど、その時々が一過性なので「個性」なんてことで悩む必要も考える必要もない。
■サスティナビリティー:流れを止めないことが最も大切なこと。何かをせき止めているようなものが障害。
エコは、ガス排出が多すぎて、それを処理するのが間に合っていないことが問題。そしてそれを処理できるのは今のところ植物だけ。
■某ビジネス書作家とはまったく話がかみ合わなかった
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まとめるのは、とてもじゃないができないんで、興味のある人は著作を読んでみてください。
それから09.9.1に出る雑誌「AXIS141号」にレポートされるそうです。
話を聞き終わり、イームズがつくったPowers of Tenが頭に浮かんだのであった。