黒い笑い

その老婆はトイレのタイルの上で
足をバタつかせ、奇声を上げながら職員に殴り掛かかる。
その足折れてるはずなのに。

元教祖様は禁止されてるお菓子を布団の中に隠してたため
そこからダニがわいて全身かゆくてたまらない。
夜になるとたくさんの生首が遊びに来るので、
いちいち追っ払うのがメンドイそうだ。

みかんを食べようとした所に職員が来たもんだから、
みかんを丸のみして「あんおあええてあいよ」
(なんも食べてないよ)モゴモゴと言い張る。

廊下に置かれたでっかい虎のぬいぐるみを
病室に運び込んで「ハニーちゃん。はい、あーんして」
と自分の食事をあげる婆さん。
しかも、ぬいぐるみの手にスプーンを持たせて。

友人のタマちゃんは老人養護施設の職員で、
各種エピソードの後に「な、笑えるやろ」と付ける。
彼女から聞いてるぶんには笑えるんだが、
翻って考えれば悲惨なことこの上ない。
実際、彼女の職場はそんな地獄に耐えきれずに
やめていく人も多いそうだ。

きっとこのようなネタはフィクションであれば
安心して笑えるんだろう。
残虐描写や悲惨なドラマは、それが過剰であるほど
「笑い」と紙一重だし。

彼女が「現実」の中で悲惨な状況を笑い飛ばす姿は、
きっとどんな職員よりも頼もしく見えるに違いない。
気が付けば彼女はその職場で一番の古株で、
居なくてはならない存在になっている。

彼女から話を聞いていると、
世界はその人、その人、それぞれ(の受容の仕方)が創っていることを
あらためて思い出す。