クワクボリョウタ「10番目の感傷 点・線・面」

クワクボリョウタ「10番目の感傷 点・線・面」

第8回恵比寿映像祭
http://www.yebizo.com/

恵比寿映像祭に行ける日が、たまたま木曜日で、たまたま聴講できたクワクボリョウタ氏のトーク・ラウンジ。
もっとも衝撃的だったのは、「10番目の感傷」がten sen-ti-ment ← テン セン(チ)メン(ト) ← 点 線 面 ・・・・!
と知ったこと。

その2010年の作品「10番目の感傷 」は、何度観に行ったかわからない。
観に行くと言うか、浸る感じだ。

作家いわく、あくまでインスタレーションとしてつくっているとのことなのだが、作品は、床も含めた6面をスクリーンにして、影絵を映すというもの。
光源が移動することで、置いてあるだけの「モノ」たちが、賑やかに動き出し、去っていく。

先に貼ったYouTubeで、確かにその様子を観ることはできるけども、この作品はぜひとも、その「展示」を観る・・・いや、先にも「浸る」と書いたが、展示に覆われるような感じなのだ。

単なる影絵が移動しているにすぎないのに、僕らは、トンネルを抜けたり、林を横切っていく。
作家は「移動」ということにすごくこだわりがあると語っていたのだが、僕が感じるのは、移動と密接に関係し、流れていく「時間」だ。
図らずも、ダジャレから生まれたような「感傷」というタイトルは、かなりダイレクトに、この作品に触れたときの感情を表している。

(しかし、意外にも作家はこの「感傷」というタイトルについては、「うさんくさいよね」というアイロニカルな立場をとっていた)

作品の最後、レールを走る汽車は、再びヘッドライトを強烈に照らしながら、もと来た道を、速い速度で逆走する。そのとき、通り過ぎていった景色は、ビデオテープの巻き戻しをするかのように、キュルキュルとスタート地点に向けて戻っていく。ゆったりと流れる景色と時間に浸っていたところを、不意に景色が巻き戻るのは、時間そのものが引き戻されるような、自分が生きてきた時間そのものが巻き戻されるような、そんな強い力で引っ張られる。

今回、恵比寿映像祭で展示された新作「風景と映像 view or vision」は、作家いわく「10番目の感傷」のDUB MIXのようなものということ。基本設計はそのままに、走る汽車を2台にしたもの。
作家が設置中に最もエキサイトしたという、2台がすれ違う箇所を楽しみに鑑賞したが、なるほど、これは凄かった。この作品の中の影絵=過ぎ去る風景 は、まったく予想がつかないのだけれども、汽車がすれ違う時に、まさか、そうなるとは!という。
12分ほどの作品だが、2周楽しませてもらった。

トークラウンジ終了後、ほんの少しお話をさせてもらった。
オーストリアの展示の時に、外から覗くような設えを試したことがあったそうだが、全然よくなかったそうだ。やはり「浸る」作品なのだろう。

また、僕はメディア・アートは好物なんだけども、メディア・アートを名乗る90%以上の作品は好きではない、つまり嫌い。
その点で、恵比寿映像祭もやはり、その他の展示もそんなところであったことも付け加えておく。
僕からのオススメはクワクボリョウタ氏の「風景と映像」だけである。

いや、いいすぎた。
この日にDIgicon6というアジアのショートフィルム祭の上映プログラムもやってて、その中の一遍

Sipparpad KRONGRAKSA, The Foster Paper

これ、タイの人のCGアニメーションなんだけど、すごくよかったわ。